JAXAのミニロケット

1月15日のミニロケット打ち上げが失敗したそうです。大変残念なことです。

失敗した事実が報道されてから書いても、「後だしジャンケン」のようで説得力がありませんがこの件について少し記述したいと思います。

昨年、ミニロケットの打ち上げコストを下げるためにスマホ用など民生用の部品を多用しているとの報道を見ました。その際「本当に民生用半導体で大丈夫?」という思いが頭をよぎりました。

そして1月15日に「通信が途絶えてしまった」というニュースを聞きました。やはり原因は民生用の半導体にある可能性が高いと思います。新聞などにもそのようなことを書いてあります。

私が会社勤めをしていた時の話です。私達が開発した業務用コンピュータを航空機内のシステムに使うプロジェクトがありました。システム・インテグレーター(SIer)がいくつかの業務用コンピューターを調達して機内で運用するシステムを作り航空会社に納品しました。もちろん飛行機の運航に関係するシステムでは無いので、民生用の製品でも使用可能でした。

システムのテスト運用が終わり本稼動が始まると色々とトラブルが発生しました。SIerだけでは解決できなかったので我々にもトラブル対策に参加して欲しいとの依頼が舞い込んで来ました。航空機内システムの計画の初期段階で我々の製品を使うシステムには反対しました。「絶対迷惑をかけない」という話をもらってシステムを構築するためのサポートを行っていました。そんな経緯があったのでトラブル解決には乗り気ではありませんでした。しかし、エンドユーザーに迷惑をかけるわけにいかないのでしぶしぶトラブル対応を行いました。

トラブルの内容は、機構的なこと、電源廻りに関することなど複数ありましたがその一つにデータ化けがありました。コンピュータのSRAM内部のデータが一部化けてしまいます。

データ化けの原因が色々考えられたので、試験をしてそれぞれの要因をつぶす作業を行いました。私は宇宙線によるソフトエラーでデータ化けが発生するのではないかと推測しました。宇宙線はα線、β線などの素粒子です。高度が高い航空機内では地表より宇宙線の量が多いので、これによってデータ化けが発生する可能性があります。私はデータ化けの現象から考えて宇宙線が原因の可能性が非常に高いと考えていました。

しかし当時、高度10,000m程度では宇宙線の量は地表とあまり変わらないというのが定説でした。そんなこともあり私が主張した宇宙線説は省みらませんでした。また宇宙線の影響を試験したくても試験装置がありません。納得はできないものの、データ化けは他の要因が原因であるということで幕引きになりました。その後、航空機内システムはデータを2重化するなどの対応によりデータ化け対策をしましたが、トラブルがあったためそれ以上普及せずフェードアウトしました。 結局、色々と振り回されて、その時設計していた製品の納期が遅れて、悪い思い出だけが残るプロジェクトでした。

その後しばらくして、高度10,000m程度でもソフトエラーが発生するというIBMの論文を見つけました。やっぱり、と一人ひそかに溜飲を下げたものです。

思い出話が長くなりましたが、ミニロケットについてはこの時の記憶が頭の中に蘇って来ました。

当時の半導体のプロセスは1ミクロン~0.8ミクロンくらいでした。現在スマホなどで使っている半導体は15nmとか25nmです。半導体はプロセスが微細になるほど誤動作しやすくなります。半導体にα線が衝突した時に与える影響は半導体の面積が小さいと相対的に大きくなります。プロセスの比率から考えれば今の半導体は当時の半導体より宇宙線の影響を2桁以上多く受ける筈です。

当時はα線がソフトエラーの主因だと考えられていたのでシリコン表面のポリイミド保護膜を厚くして対策していました。しかしプロセスが微細になるとβ線でも誤動作するかもしれません。β線を遮蔽することは非常に困難です。ミニロケットに厚い鉛のシールド箱を搭載するわけに行きませんし、今は鉛フリーの時代ですから。

ソフトエラーの対策は

(1) 古いプロセスを使って宇宙線の影響を減らす

(2) その上で、回路の冗長化(多数決、エラー訂正など)する 以外ないと思います。

民生用の半導体ではプロセスが微細過ぎますし冗長性が無いと思います。

ミニロケットの故障の原因調査の結果を見守りましょう。

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