大変遅くなりましたが
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
2016年は穏やかな年明けを迎えましたが、この1週間ほど冬らしい天気で各地で大雪が降っています。
大きな災害にならないことを祈っています。
私が住んでいる松本でも大雪が降りました。その後寒さが続き雪が凍って外出時に滑らないように気を使います。
先日久しぶりに以前勤めていた会社の仲間と飲む機会がありました。その際「最近ブログが全然更新されていないじゃないか」とお叱りを受けました。色々と忙しくてついつい更新を先延ばしにしていました。これからは頑張って書こうと思います。
いままで次の製品の設計のために勉強していましたがそれが終了して設計作業に移行しています。数種類の回路方式を候補して検討しています。性能、商品性、コスト、独自性など考慮しながら絞り込みをしようとしています。最終的には2~3種類の回路が評価できるブレッドボードを試作して回路を決めたいと思います。
そんな折に受託の依頼があったので受けるか迷いしました。しかし他の製品を設計していれば良いアイデアやヒントが浮かぶかもしれないと思って受けることにしました。
この設計でMUTE回路について検討しましたので書きたいと思います。
ラインアンプ等では信号経路とグランド間にスイッチを入れてMUTEします。こうすると信号経路にスイッチが入らないので接点による特性への影響がありません。私はプリアンプの出力にリレーによるMUTE回路を使っています。この方法は理論的にMUTE回路による信号劣化は皆無です。
受託の設計ではスペースと消費電流の点から半導体を使ったMUTEを試して見ることにしました。
LTspiceを使って特性を調べてみました。回路は以下の通りです。
MUTEがかかっていない状態の歪率を測定した結果は以下の通りです。信号は1kHz 2Vp-pです。僅かですが歪が発生しています。9次までのTHDは約0.00002%なので無視できるレベルかもしれませんが気になります。
またMUTEによる減衰量は26dBでした。電源オン時のポップノイズを防止するためにはこれで良いかもしれませんが減衰量にも不満があります。もちろんR2を大きくすれば減衰量は増えますがあまり大きくすると弊害があるので減衰量は20-30dBがいいところでしょう。
結局今回のMUTE回路もリレーを使用することにしました。
MUTEがかかっていない時に歪が発生する理由ははっきりしません。アーリー効果による抵抗とコレクタ=ベース間容量がVceによって変動することが原因だと想像できます。トランジスタのモデルのこのパラメータを変更してみましたが歪は減りませんでした。他のパラメータが影響していると考えられます。今回は半導体のMUTEを使用しないのでこれ以上の解析はしません。いずれしっかりと確認したいと思います。しかし一般論としてアーリー電圧が高く、電極間容量の少ないトランジスタがMUTEには向いていると思います。
上記回路ではNPNトランジスタを使っていますがQ2をPNPに変更してみました。歪はなんと30dB以上増加しました。やはりPNPは特性が悪いです。
またオーディオ雑誌のメーカ製品の紹介記事の回路ではMUTE回路をNPNトランジスタ一つで実現しています。私も最初はこの回路を真似て確認してみました。しかし1石の回路ではMUTE時に出力が半波整流波形になりMUTEが機能しません。半導体MUTEを検討する場合には注意が必要です。
あと数日寒い日が続くようですが皆さん気をつけてお過ごしください。