私がJazzを聴き始めて間もなくチック・コリアのReturn To Forever(RTF) がリリースされ一世を風靡しました。私もLPを購入し何十回と聞きました。初めて聞いた時には鳥肌がたつような興奮を覚えて完全にその音楽の虜になりました。その後も彼は様々なスタイルや編成でレコードをリリースしました。またRTF以前のサークル、ARCやNow He Songs Now He Sobs なども遡って聞きました。彼はアコースティック楽器、電子楽器など様々なスタイルで演奏しますが底流にはラテン調、スパニッシュ調のメロディとリズムが流れていることが特徴的です。
惜しくも昨年の2月に亡くなってしまいました。彼のコンサートを何回か聞きにいきました。松本市の ハーモニーホールでのソロコンサートの時、彼は演目をメモした紙をピアノの譜面台に置いてそれを見ながら演奏していました。
演奏が終わるとそのメモを折って紙飛行機にして客席に飛ばしました。幸運にも私がその飛行機をキャッチして持ち帰ることができました。そのメモはどこかにある筈ですが見つかりません、、
その前年2020年3月にはマッコイ・タイナーが亡くなりました。彼はジョン・コルトレーン・カルテットのピアニストとして活躍し、コルトレーンの死後アフリカ回帰の音楽、壮大で骨太な音楽を展開していました。彼のコンサートも何回か聞きに行きました。非常にエネルギッシュで汗が飛び散るような演奏でした。晩年の音楽をしっかり聴いていなかったのでこれから聴こうと思います。
キース・ジャレットは健在ですが脳卒中のため演奏がままならないと聞いています。初めてキース・ジャレットのソロピアノ(3枚組)がリリースされた時、Jazz誌上でこの演奏はJazzか否かという論争が繰り広げられました。うろ覚えですがJazz派の油井正一氏が「この演奏にはJazzの賦質がある。みなさん財布を持ってすぐレコード店に駆け付けなさい」みたいなことを書いていて、私もレコード店に駆け付けた思い出があります。当時の学生には非常に大きな出費で大変でした。でも油井さんの言葉が理解できました。
彼ら以外にも偉大なピアニストは多くいますが、私がJazzを聞き始めたころ強く影響を受けその後も聞き続けたピアニストがこの3人です。彼らはスタイルが異なりそれぞれ三角形の頂点に位置していて、その三角形がJazzを包含しているように感じます。彼らの演奏を録音でしか聴けなくなってしまったことは残念です。
彼らの古い演奏を聴くと私の青春に帰ることができます。個人的にも思い入れがある素晴らしいピアニストです。
少しノスタルジックな気持ちになりました。