家内がオルガン同好会に入ってオルガンの練習をしている。
オルガン同好会はオルガンを弾くだけではなく、オルガンに興味を持っている人にオルガンの魅力を伝える催しを行う。
家内はその催しで来場者にオルガンの原理を子供達にわかりやすく説明することになった。家内は台本を見ながら日々練習しているのでいやおうなしに私の耳にも入って来る。
その説明によるとオルガンの送風機からの風をパイプに送るにはストップというものを操作して鍵盤を押す必要がある。ストップによりどのパイプのセットに風を送るか選択する。
ストップには8とか4という数字が書いてある。8と書いたストップを引くと8フィートのパイプが選択される。
ここで私はわからなくなってしまった。パイプが1/2波長で振動しているとすると8フィートのパイプの共振周波数は約67Hz。ピアノでは真ん中のドより2オクターブ下のドに相当すると思われる。しかし8フィートのパイプを選んだだけでは音階を演奏できないので8フィート以外のパイプも選択する必要がある。何故8フィートを選んだだけで音階が出せるのか?
疑問1) 8÷1.0595,8÷(1.0595)^2、8÷(1.0595)^3….といくつものパイプを選択しないといけないのでは?
疑問2) パイプには開管と閉管があるそうだが閉管は1/4波長で共振するので同じ8フィートでも開管より1オクターブ低い音が出るの?
疑問3) どの鍵盤を押すと8フィートのパイプが鳴るの?
疑問4) 8フィートのストップを引いて真ん中のドを弾いた時と4フィートのストップを引いて1オクターブ下のドを弾いた時には同じパイプが鳴るの?
など疑問がn個次々と浮かんで来た。
家内に聞いたがよくわからないと言うし、練習の邪魔をするなと怒られてしまう始末。
それで調べてみたところ以下のようなことが分かった。やっと奥深いオルガンの最も基本的なことがわかっただけだ。
疑問1,3の答) 8フィートというのは左端の鍵盤を引いた時に鳴るパイプの長さを表す。鍵盤の数だけパイプがある。つまり8フィートから段々短くなる47本とか61本のパイプのセットを8フィートと呼ぶ。
ちなみに8フィートのストップを引いた時には左端のドが67Hzなのでこれより2オクターブ上のド(真ん中のド)は268Hz。ピアノの真ん中のドと一致する。
疑問2の答) どうやらストップに書いてあるフィートは開管の長さのようだ。閉管でも開管と同じ高さの音が出る場合は実際の長さの倍の長さで呼ばれる。リードのあるリード管は長さが非常に短い。きっと開管の1/10くらいだと思う。それでも8フィートなどと呼ばれる。 つまりフィートは長さの単位でなく音程を表す単位として使われているようだ。
疑問4の答) 基本的には一つのパイプが複数のストップで兼用されることは無いそうだ。
サンサーンスの交響曲3番では16Hzのドが演奏されるという。これは32フィートのストップを引いた時に鍵盤の左端のドを押すと出る音だ。 32フィートというと開管なら約10mの長いパイプだ。
パイプは長さだけでなく材質(真鍮か木かなど)や先に述べたリード管かそうでないもの(フルー管)かにより音色が異なる。音色に関してはドイツとかイタリアでストップの名前が違うのでもう少し調べないとわからない。
曲によって最適なパイプの組み合わせを選ぶ。これをレジストというそうだ。シンセサイザーの用語だと思っていたが本家本元はオルガンだったのだ。
8月1日に松本のハーモニーホールでオルガンの催しの本番があり聞きに行った。家内は無事オルガンの説明を終えた。良かった良かった。
その後参加者は大ホールのオルガンを体験することができた。私もオルガンに触って来た。
Yardbird Suitesのテーマを派手な音のレジストで弾かせてもらった。気持ちいい~! 専属オルガニストの原田さんが「いい感じですよ~」とお世辞を言ってくれた。
オルガンの演奏台の近くで撮った写真。迫力がある。