Auraのアンプの修理(2)

注文していた部品が届いたので交換した。

リレーは問題なく動作している。2-3日連続運転してから依頼主に届けようと思う。

修理前と後の特性を確認した。

周波数特性と歪率はほとんど変化なし。歪みは以下の通り。測定誤差の範囲。

DIS_before

DIS_after

10kHzの歪みが多い。回路を見ると2段目の差動で直接出力段のFETをドライブしている。出力段のFETは2SK1058/2SJ162だと思われるがこれらの入力容量は1000pF近くある。

これに対して2段目の差動アンプのコレクタ電流は0.35mAしか流していない。これでは出力段のFETのゲート容量を素早く充放電できない。仮に0.35mAフルに流れて入力容量を充電したとして計算すると

T=CV/I=900pF x 28V / 0.35mA=72us

ここで C は2SJ162の入力容量=900pF、V はアンプの最大出力50Wを出力するために必要な電圧=28V、I は入力容量を充放電する電流=0.35mA。

10kHzで0Vからpeakまでの時間は1/4周期なので25us。上記の入力容量充電時間時間は25usより長いので歪みが発生する。上記計算はステップ状に0.35mAが流れてFETの入力容量を充放電する場合の計算であるが実際にはFETのゲートに発振防止の抵抗が入っているし、2段目差動は位相補償のコンデンサが入っているのでさらに遅くなる。出力が増えるほど歪みが増えるのは上記の計算の通り出力が大きいほどドライブ電圧の不足が多くなるからだ。Auraともあろうものがどうしてこんな安易な設計をしたのか不思議だ。(背面にはDesigned by B&Wと書いてあった、、、)

ただし音楽では高周波成分のレベルが低いことを考えると実用上は許容できるだろう。そういう意味では凄い割り切りなのかもしれないが、、、

続いてダンピング・ファクターを比較する。

DF_before

DF_after

修理前は不安定な様子がわかる。これはリレーの接点の劣化とコイル劣化による接触圧力の低下によるものだと考えられる。修理後は安定している。10kHz以上でDFが上昇しているのはダミーロードに無誘導タイプを使用していないのでインピーダンスが上昇しているためDFが見かけ上高くなっているためだろう。(今パワーアンプの開発を計画しているのでちゃんとしたダミーを作る必要がある)

Auraのアンプはカジュアルに聞くことを想定しているのでこんな感じかなあと思う。しかし部品やレイアウトに気を配っているので回路にもう少し配慮してもよかったのではないか?

 

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