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スピーカーセレクターのスイッチについて

スピーカー切替器に第一に要求される性能は、スイッチのON抵抗(あるいは接触抵抗)が低いことです。切替器の抵抗はアンプの出力抵抗(ダンピング・ファクター)およびスピーカー・ケーブルの抵抗に比較して十分低い必要があります。スピーカーによっては1950年代に開発されたJBLやALTECのように出力抵抗が高いアンプでドライブしたほうが活き活きと鳴るものもあります。このような場合でもスピーカーセレクターはON抵抗が低くあるべきで音はアンプとスピーカー(とケーブル)によってのみ決められる必要があります。

 

メカニカル・スイッチの接触抵抗は10mΩ以下が可能です。そのためスピーカー切替器には一般的にメカニカル・スイッチが使用されています。

 

最近はMOS FETのON抵抗が低くなりMOS FETを使ったエレクトリカル・スイッチでも10mΩ以下のON抵抗を実現することができます。
MOS FETはドレイン-ソース間にその構造に起因する寄生ダイオードが入っています。スイッチを構成するためにこのダイオードが互いに逆向きになるように2個のMOS FETをシリーズ接続する必要があります。またBTLアンプを使用するためには+側/-側を切替える必要があるのでアンプとスピーカーの間には合計4個のMOS FETが必要です。
しかし、ON抵抗が2mΩ以下のMOS FETを使うと4〜6mΩ程度のスイッチを実現できます。したがって内部配線を含めても10mΩ程度のスピーカー切替器を実現できます。

 

もう一つの切替手段としてリレーを使ってスピーカーのON/OFFをするこができます。リレーはコイルに電流を流す/流さないでON/OFF制御ができます。リレーでは接触抵抗を10mΩ以下とすることは一般的に困難です。

それぞれの方式の利害得失を以下に説明します。
この中で特筆すべきはMOS FETの最大電流の多さです。100A以上の電流を流すことができます。もちろんMOS FET以外の配線や端子にはこれほどの電流を流せませんが、、
メカニカル・スイッチの最大電流は数10A程度です。

方式 長所 短所
メカニカル・スイッチ

・接触抵抗が低い
・シンプルな構成

・経年変化がある
・操作トルクが大きい
・電子制御が困難

MOS FET

・ON抵抗が低い
・経年変化が少ない
・最大電流が多い
・電子制御が可能

・耐圧に制限がある(耐圧とON
 抵抗はトレードオフの関係)
・制御が多少複雑

リレー

・比較的簡単な制御
・電子制御が可能

・接触抵抗が大きい
・経年変化がある

 

本機ではスピーカー切替器のスイッチとして優れた性能を有するMOS FETを使用しています。リモコンで切替えるための手段としてMOS FETを選んだのではなく、スイッチとしてもベストな性能を有しているMOS FETをスイッチに選びました。

 

MOS FETスイッチのON抵抗について

 

SSU-01 Ver.2のMOS-FETのON抵抗は4個合計で約3mΩです。従来品の約1/2です。
ON抵抗のバラツキはVer.2も従来品も約10%です。
しかしON抵抗の絶対値が小さいのでSSU-01全体のON抵抗のバラツキも小さくなります。

スピーカーの能率補正について

スピーカーにより能率が違います。スピーカーの能率はdB/W/mあるいはdB/2.83V/mと表記されています。たとえば90dB/W/mのスピーカーは、このスピーカーに1Wの電力を加えるとスピーカーの軸上1mの場所に90dBの音圧が発生します。音圧とは音圧レベルのことです。
以下のように定義されます。
音圧レベル=20xlog(P/P0)
P0=20μPa(マイクロパスカル)で人間が感知できる最小の音圧です。
スピーカーの能率に2種類の定義がありますが2.83Vというのは2.83x2.83÷8=1Wなのでインピーダンスが8Ωのスピーカーの場合はdB/W/mとdB/2.83V/mは同じです。しかしインピーダンスが4Ωや6ΩのスピーカーでもdB/2.83V/mと表記しているものがあります。4Ωの負荷では電力は2.83x2.83÷4=2Wなのでこれはカタログスペックを良く見せるための水増しと言えます。

 

能率が異なるスピーカーを切替えるとスピーカーにより音量が大きくなったり小さくなったりします。音楽を聴きながらスピーカーを切替える目的はスピーカーによる音色や表現の違いを楽しむこと・認識することです。しかし音量が変わると音色・表現の違いを正しく聞き取ることができません。
人間の聴感は音量の差があると音質が違って聞こえます。一般的に大きい音量のスピーカーから小さい音量のスピーカーに切替えると音が痩せたように感じます。逆に小さい音量のスピーカーから大きい音量のスピーカーに切替えると音が立派になったように感じます。そして音量の差のほうが音質や音色の差よりも影響が大きいのです。一種のハロー効果と言えるかもしれません。

 

そこでスピーカーの音量が同じになるよう、手動でアンプのボリュームを調整しますがこのために数秒〜数十秒かかります。音量を調整したあと正確なスピーカーの音質の違いを判別できれば問題ありませんが、普通は切替えた直後の第一印象に判断が少なからず影響されます。

 

スピーカーを切替えると自動的に音量が同じになればスピーカーの表現力の差を正しく比較することができます。

 

スピーカーの音量を能率にかかわらず同じにするためにはスピーカーの能率に応じてスピーカー駆動電力を調整する必要があります。
スピーカーAとスピーカーBはインピーダンスが8Ωでそれぞれ能率が93dB/W/mと87dB/W/mとします。スピーカーAとBを同じ音量で再生するためには、スピーカーBを鳴らす場合はスピーカーAの場合より6dBアンプのゲインを増やすと同じ音量で再生できます。
以下に計算例を示します。
スピーカーAを1Wで駆動している場合アンプ出力電圧は2.83VでスピーカーAの軸上1mの音圧は93dBです。
スピーカーBをアンプのゲインを6dB(=2倍)で駆動するとスピーカーBの駆動電圧は2.83x2=5.66Vです。この時スピーカーBの駆動電力は5.66x5.66÷8=4Wです。
スピーカーBの駆動電力はスピーカーAに対して電力比で4倍(=6dB増加)なのでスピーカーの音圧レベルも6dB増加し、スピーカーBの軸上1mでの音圧は93dBになります。

 

実際にはスピーカーの固体差、インピーダンスの違い、設置条件による違いなどにより音圧は異なります。スピーカーのカタログスペックの能率の差だけでアンプのゲインを決められないので実際に音を聞きながらアンプのゲインの設定をする必要があります。

 

本機ではPREAMP UNITのゲインをスピーカーによって変更しスピーカーの能率の差を補正する機能をもっています。補正するためのプリセット値はスピーカーの音を聞きながら設定します。スピーカーを切替えるとプリセット値によりアンプのゲインが自動的に調整されて能率の異なるスピーカーを切替えて使っても常に同じ音量で聞くことができます。

PREAMP UNITとSELECTER UNIT間の接続について

本機はリモコンでPREAMP UNITの音量、入力切替およびSELECTER UNITのスピーカー切替の操作ができます。
リモコンの受光部はPREAMP UNITに搭載されています。
リモコンでスピーカー切替操作をするとPREAMP UNITからSELCTER UNITにスピーカー切替信号を送ります。
SELECTER UNITはスピーカー切替信号を受けてスピーカーの切替を行います。
スピーカーごとに設定してあるオフセット値を使いPREAMP UNITのゲインを調整します。
本機ではPREAMP UNITとSELECTER UNITの接続にストレートLANケーブル(UTPケーブル)を使用しています。
しかし2つのUNIT間をEthernetで通信しているのではなく、本機固有の通信を行っているのでEthernetとの互換性はありません。

 

UTPとはunshielded twisted pairのことで、シールドしていないツイスト線を意味します。
LANで使われるRJ45コネクタのピン配置は1,2ピンと3,6ピンがそれぞれツイストされていてLANの差動信号伝送に使用されます。
本機では1,2,3,6ピンを4ビットのデータ線として使用しています。そして4,5ピンを電源として7.8ピンをGNDとして使用しています。

 

LANケーブルを使用するとスピーカー切替器の設置環境に応じた長さのケーブルを安価かつ容易に入手することができるので便利です。
一方でPCやルーターなどのネットワーク機器と誤って接続すると正常に動作しないだけでなく最悪の場合は機器の破損の原因となります。
そこで本機では以下のように誤接続による機器のダメージを防いでいます。

 

@ケーブルのピンアサイン
通常のネットワーク機器は4,5,7,8ピンは使用されていません。そこでこのピンに電源を配置しました。したがってPCやルータなどと誤って接続しても本機から供給される電源がネットワーク機器に悪影響を与えることはありません。
しかしネットワーク機器の中には4,5,7,8ピンに終端抵抗が入っているものがあります。その場合PREAMP UNITから供給される電源が終端抵抗を通して流れます。本機の電源出力には過電流保護回路が入っているため終端抵抗に過大な電流は流れません。しかしネットワーク機器側の終端抵抗が発熱する場合があるので注意が必要です。

 

またLANにはPoE(Power over Ethernet)という規格があります。これはLANケーブルを通して電源を供給する規格です。この規格では4,5ピンに+電源を7,8ピンに-電源を配置しています。本機でも4,5が+電源、7,8がー電源(=GND)のためPoE機器と同じであり過電圧や過電流が印加されなかれば問題ありません。
ストレートLANケーブルの代わりにクロスケーブルを使用しても4,5,7,8ピンの結線はストレートケーブル同じため問題は発生しません。

 

A信号の保護
1,2,3,6ピンの信号ラインには保護回路を入れてあり電流の制限と異常電圧の印加防止をしています。したがってLANの信号と接続されても本機、LAN側とも問題ありません。

 

B電源の保護(PoE機器の給電側と本機を接続した場合)
PoEの電源供給側は接続相手がPoE対応機器か判別してから電源を供給します。本機ではPoEの受電機と認識されない回路構成のためPoEから本機に対して電源が供給されることはありません。

 

C電源の保護(PoE機器の受電側と本機が接続される場合)
PoEの受電側は供給電圧が30V以下では内部への電源供給を遮断します。PREAMP UNITからのSELECTER UNITへ供給する電源電圧は20V以下です。したがって本機からPoE機器対して電流が流れることはありません。また本機の電源出力には過電流保護回路を入れてあるので過大な電流が流れることはありません。
PoE機器との接続だけでなく電源出力を誤ってショートした場合にも本機の電源が保護されます。

 

上記のように本機をネットワーク機器と誤って接続しても問題ないように考慮しています。
それでも万が一のことを考えて本機のユニット間接続ケーブルは絶対にネットワーク機器と接続しないように注意してください。

 

PREAMPの構成

PREAMP UNITのブロック図は以下の通りです。
新日本無線のアナログスイッチとTI社のオペアンプで入力切替を行います。その後TI社のPGA2310で音量調整を行ったあとオペアンプのバッファーを通して出力します。

 

 

入力切替

アナログスイッチとオペアンプを組合わせて入力切替を行います。オペアンプをゲイン1の反転増幅器として使用します。
PGA2310の入力抵抗は10kΩです。プリアンプの入力抵抗としては少々低いです。(許容範囲ですが)入力切替部で切替とあわせてバッファリングし適切な入力抵抗になるようにしています。本機では入力抵抗が22kΩになるように設定してあります。
アナログスイッチのON抵抗は温度により変動しますが、十分大きい抵抗を直列に入れることにより特性変化が無視できるようになります。
またオペアンプの反転増幅回路内にアナログスイッチを入れているのでアナログスイッチに印加される電圧の振幅は小さく、アナログスイッチのリニアリティの良い部分を使用できます。
オペアンプにはTI社のLME49720を使用しています。約20種類のオペアンプを取り替えながら比較・評価しました。
評価の結果このアンプは低音から高音までの音の切れのよさが優れていると同時に刺激感がなく安心して聞けました。
また音の定位で奥行感が最も感じられたためこのデバイスを採用しました。

 

音量調整

PREAMPの音量調整はTI社のPGA2310を使用しています。通常の可変抵抗を使う音量調整回路では可変抵抗の位置により音質が変化するなどの課題があります。PGA2310では音量を調整しても音質が変わらず安定した高音質を実現できます。また音量調整時にノイズが発生しないようにゼロクロス検出回路が搭載されています。音量調整時気になるノイズが発生しません。
PGA2310は音量が-∞〜31.5dBまで調整できますが本機では最大ゲインを22dBとしています。
PGA2310の設定値を変更し、音量およびバランスの調整を行います。

 

出力バッファ

PGA2310は600Ω負荷を駆動できる能力を持っています。しかしゲイン調整により微小ながら出力インピーダンスが変動します。出力のラインケーブルが長く負荷容量が大きい時などはゲインを変えると音質が多少変わります。そこでPGA2310の出力にLEM49720によるバッファを入れました。これにより音量調整しても音質が変わることが無くなりました。
また入力切替回路で信号が反転するので出力バッファでもう一度反転させるために出力バッファも反転アンプにしてあります。PREAMP全体では正相アンプになります。

スピーカー切り替え時のノイズについて 

スピーカーを切り替える際、それまでONしていたスイッチをOFFし、次に選択するスイッチをONします。スイッチの切り替え時に各スイッチのON/OFFのタイミングを考慮する必要があります。メカニカルスイッチではショーティングタイプまたはノンショーティングタイプと呼ばれる方式があります。前者はスイッチ切り替え時二つのスイッチが同時にONする瞬間があります。後者はスイッチの切り替えの瞬間に二つのスイッチが両方ともOFFする瞬間があります。

 

スピーカー切り替え器ではインダクタンス成分をもつスピーカーを切り替えるので逆起電力が発生しノイズの原因になります。
ノイズ発生のメカニズムは以下の通りです。
インダクタンスに流れる電流は急激に変化できません。スイッチをOFFする前にスピーカーのボイスコイルに流れていた電流はスイッチをOFFした後も継続して流れようとします。スイッチON中はボイスコイルはアンプの出力インピーダンスでショートされていますがスイッチをOFFするとボイスコイルから見たインピーダンスは無限大になります。ボイスコイルの電流が無限大の抵抗に流れ続けようとするのでそこに発生する電圧は無限大になります。実際にはボイスコイルの抵抗による損失やネットワークの素子などにより有限の電圧が発生します。これを防ぐためにためスイッチとしてショーティングタイプを使うことが多いと思います。ショーティングタイプを使うとアンプの出力がボイスコイルから切り離されることがないので逆起電力が発生しません。しかしショーティングタイプでもOFFするスピーカーは最終的にアンプから切り離されるのでブチッというノイズが発生する場合があります。

 

本機ではゲイン調整機能を積極的に使いスピーカー切り替え時のノイズを低減しています。
ノイズ低減のシーケンスは以下の通りです。

 

・アンプのゲインを最低にする。(ランプ状にゲインを低下させる)
・現在のスピーカーのスイッチをOFFする
・次のスピーカーのスイッチをONする。
・アンプのゲインを戻す。(ランプ状にゲインを上げる)

 

この動作によりスピーカー切り替え時スピーカーのボイスコイルに電流が流れない状態にできるので逆起電力に UNITよるノイズが発生しません。
また上記処理によって逆起電力の発生を抑えてスイッチ素子のパワーMOS-FETに過大電圧がかからないようにしています。

 

実際にはアンプのゲインを増減する際に多少のノイズが発生する(*)のでノイズを皆無にはできませんが、上記の方法によりノイズを減らすことができます。

 

能率補正機能は、本来の機能以外にもスピーカーの切り替えノイズを低減する効果があります。

 

*ゲイン変更時入力信号のゼロクロスを検出して信号が0Vを横切る時にゲインを調整します。これにより信号の不連続変化を無くしノイズを減らしています。
しかし信号の変化が激しい時などゼロクロスを検出して信号を切り替えている最中に信号レベルが大きくなるとノイズが発生する場合などあります。

バイアンプ対応について

本機をバイアンプ駆動で使用可能かという質問がありました。

 

以下にバイアンプ接続の一例を示します。この接続では3台のスピーカーの切り替えが可能です。

 

スピカーセレクター

 

上記のように接続する場合SSU-01を2台接続ししNORMALモードで使用します。
取扱説明書18ページに「SELECTER UNITを2台使用接続する際は必ずEXPANDモードで使用してください。」と記載しています。
6台のスピーカーを切り替える接続の場合にNORMALで使用するとアンプの負荷として2台のスピーカーが接続されます。
そのためスピーカーのインピーダンスや再生時のレベルによってはアンプにとって過大な負荷となり問題が発生する可能性があります。
そのため取扱説明書ではSSU-01を2台接続した場合にNORMALモードで使用することを禁止しています。

 

使用するアンプ、スピーカーなどの仕様・定格をご確認の上、同時に2台のスピーカーが駆動されないように接続した場合にはNORMALモードで使用可能です。
誤接続に注意して使用してください。

 

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製品概要
スピーカー能率補正機能付スピーカー切替器のソフィソナント・オーディオ
仕様
スピーカー能率補正機能付スピーカー切替器のソフィソナント・オーディオ
フォトギャラリー
スピーカー能率補正機能付スピーカー切替器のソフィソナント・オーディオ
取扱説明書
スピーカー能率補正機能付スピーカー切替器のソフィソナント・オーディオ


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