6月24日は朝からBBCのWebサイトやテレビでBrexitの投票結果を見つめていました。投票結果が気になり仕事が手につきませんでした。
世論調査で残留優勢と報じられて投票の2-3日前から株が上昇していました。私にはそれが却って不気味に感じられました。それなので離脱の可能性もありと思っていましたが最後は残留してくれると期待していました。結果はまさかの離脱。
日経平均は1200円ほどの大暴落、NYダウも$600もの下落となりました。
これから一体何が起こるのか不安で一杯です。先日の日銀のマイナス金利でさえ導入後しばらくしてから日銀が予想していなかったデメリットがすこしづつ判明して来ました。これよりも格段に複雑で規模と影響力が大きいUKのEU離脱は今後具体的な弊害がどんどん明らかになって来るでしょう。その度に株も為替も乱高下を続けることになりそうです。
私のUKの友人も朝4時に起きたら離脱が決まった!とかなり驚いていました。またポーランドからUKに来た友人が2人居ますがこれからの交渉でどうなるか心配です。既に居住して税金を払っている人を追い出すことはないと思いますが。離脱前に駆け込みで移住する人も増えるでしょう。そして私が住んでいたスコットランドが再び独立を考えていることも心配です。
その後の報道を見ると離脱派も「まさか本当に離脱するとは!」とびっくりしているそうです。また残留派は再投票を求める署名を行っていてその数はどんどんと増えているようです。UKの人達は熟慮の上に離脱を決めたのではなく感情の赴くままに離脱を選択してしまったのです。どのような法律によって今回の投票が行われたかわかりませんが法的拘束力は無いと言われています。(ただの参考意見?それもよくわかりませんが)ですからどんでん返しもあるかもしれませんが大義名分が無いと国内の分断がさらに大きくなります。
今回のような事態に至ったのにはいくつかの必然性と不運があると思います。
(1) EUが制度的に不完全で経済政策ではドイツを利するように進められた。
ギリシャ危機の時にも言われたように通貨は統一で財政政策は別々。経済力や生産性が異なる国家が単一通貨になることで生じる歪はいつか噴出します。東西ドイツ統一の成功体験によって行われたかもしれませんがそれより規模も参加国の経済状況・国民性の違いがはるかに大きいです。さらにECBの金融政策はドイツ一辺倒なのでドイツの一人勝になります。そのドイツ国民もPIIGSなどに財政支援をすることに不満を感じています。結局EU内の勝ち組も負け組みも一般の国民はEUによって不幸になっていると感じています。これはEUの制度設計に問題があるためでしょう。
(2) EUからの移民問題
東欧諸国がEUに加盟し多くの移民がUKに入国しました。私がスコットランドに行った2007年の時点で100万人以上の人が東欧からUKに来たと聞きました。ポーランドの人は非常に優しく勤勉です。日本人としてシンパシーを感じます。それゆえに英国人の雇用が奪われることもあったと思います。ポーランドなど東欧の人はUKは英語が使える、第二次世界大戦中の経験があるのでドイツには抵抗があるなどの理由で大陸内ではなく島国のUKに多く移って来ました。ですからUKでの移民問題はEUの中でも深刻かもしれません。
(3) イラク、シリアなどの難民問題
国民投票の時期に合わせてこのような問題が起きなくても良いのにと思います。しかしこの問題は米英が招いた問題なので回りまわってブーメランのように帰って来たと思います。むしろ大陸のほうが大変でしょう。
(4) UKと大陸の距離感
私が感じたことですがUKの人は話の中でフランスやドイツに対する反感(敵対心ほどではないがシニカルな感情)を表すことが往々にしてあります。スコットランドの人でさえそうなのでイングランドの人はもっと強いと想像します。これは世代がいくつか代わらないと克服できない感情でしょう。
(5) UKの経済政策
UKは金融などに力を入れすぎて農業・水産業・鉱工業にあまり力を入れていません。これは私がUKで働いて実感したことです。政府はそれなりにやっているつもりでしょうが結果は違います。サッチャー以来の経緯を私は正しく理解していませんが弱者を切り捨てて来たことは確かです。その時に切り捨てられたお年寄りが今回は離脱票を投じたと思います。高齢者ほど離脱支持が多かったのは偶然ではないと思います。これ以外にも格差が存在することは否めません。
(6) キャメロンの軽率な行動
一昨年のスコットランド独立の際もキャメロンが安易に住民投票を認めました。最初はたかをくくっていたのに投票直前には大慌てをしました。今回も全く同じパターンです。国民投票の大安売りはどうなんでしょうか?
私がUKに居た時にデビッド・キャメロンがゴードン・ブラウンから政権を奪いました。その時には過半数を持たず第2党のクレッグと政権構想をわずかな期間でまとめ上げあっという間に政権を作りました。その頃の日本の政権と比べると手際のよさがありました。さらに英国では政治家を人間・能力・品性などでスクリーニングし国を背負える人だけが政治家になれると聞いていました。キャメロンの演説を聞いて(日本との比較も含めて)政治を任せることができる人だと思いました。ただし保守党の内向きな政策には不安がありましたが。
そのキャメロンがいったいどうしたことなんでしょうか?もう一度言いますが国民投票を安売りしすぎました。
10月までに次の首相を決めて後継者に移行交渉を担ってもらうとのことです。私も最初は当然だと考えました。でも良く考えたら今回の結果を招いた責任を取って世界に対する不安拡大が最小になるための努力と次の後継者への早急でスムーズなバトンタッチを全力で行うべきです。
(7) 英国民の誤算
私が英国民に持つイメージはとことん議論して納得しないと結論を出さない人達です。実際に会議をすると凄く議論します。日本人の私が口を挟むのは結構大変です。しかし会議が脱線して10分で終わる会議が1時間以上になることもよくありまました。中身が無い議論をしていることも多いのです。今回のように重要な案件では脱線が少なく充分議論したと思っていました。ところが先に書いたようにあまり考えずに投票したり、他人任せの投票をしたりと意外でした。
そしてEU離脱後のビジョンがはっきりしません。そう言えばスコットランド独立の際も独立後のビジョンはクリアではなかったです。英国民はそんな状態では普通は納得しないはずですが、、
いずれにしてもUKの国民が決めたことです。尊重するしかありません。そしてこれがただのちゃぶ台返しではなく50年-100年後に良い結果を得るための生産的な決断であって欲しいと思います。全てはこれからの関係者の知恵と行動によります。
その一方で国民投票の恐ろしさを改めて教えてもらいました。成熟した国と思っていたUKでさえこういうことになりました。私達も心しないとなりません。
思い入れのある国なのでオーディオとは関係ないですが感情的に書いてしまいました。
でも言い訳をするとUKには以下のようにオーディオメーカーが多いのでそれが原因で感情的になりました、、
LINN、TANNOY、KEF、ProAc、B&W、Quad、Garrard、Monitor Audio、Code、SME,Goodman、Cambridge Audio, Harbeth, dCs などなど