カテゴリー別アーカイブ: スピーカー切替器

スピーカー切替器 Ver.2 最終ロット製造

スピーカー切替器は長らく製造できない状態が続いていました。
一部のパーツの在庫はありましたが、スピーカーの切替に使うMOS-FETなどのキーとなる部品が入手できないのがその理由です。

半導体不足の原因はさまざまな要因が重なったためで、私のような少量生産の業者には部品が回って来ませんでした。
半年ほど前から漸く部品が手に入るようになりましたが、価格がかなり高くなってしまいました。為替レートや価格動向を見ながら部品を購入しました。

在庫のある部品もあるため、販売価格は以前と同じに設定します。

今までカスタム品の開発・製造などに取り組んでいました。これからはオリジナル製品の開発に取り組みたいと思います。

スピーカー切替器 再発売(2)

音工房Zさんからのオファーをいただきスピーカー切替器 Ver.2の開発と製造を行いました。昨年12月に初回ロットを出荷し、1月、2月と立て続けに出荷しました。音工房Zさん向けの製造に注力していたので、他には手が回りませんでした。

注文を頂いた分の製造の目処がつき漸く直販の準備にとりかかることができます。

Ver.2の仕様について説明します。変更点は以下の表の通りです。これら以外は変更ありません。

ユニット項目Ver.1Ver.2
SSP-01歪率(定格出力時)0.0050%0.0025%
SSU-01オン抵抗12mΩtyp6.5mΩtyp

SSP-01では、信号経路に使用している抵抗を高性能薄膜抵抗に変更し、性能向上を実現しました。それ以外に信頼性と作りやすさの向上のために基板の変更を行いましたが、仕様には影響ありません。

SSU-01では、スイッチ用のMOS-FETの変更、基板レイアウトの変更などを行いオン抵抗を約1/2にしました。

MOS-FETのパッケージは従来品では下の写真の左のD2PAKでした。Ver.2では写真右のD2PAK-7と呼ばれるパッケージのMOS-FETを使用しています。写真でわかるようにD2PAKはソース端子が1本ですが、D2PAK-7は5本あるので中のシリコンの性能が同じでもデバイス全体のオン抵抗を小さくできます。Ver.1を開発した当時もD2PAK-7パッケージはありましたが価格が非常に高く採用するのは非現実的でした。しかし今はD2PAK-7も使用可能な価格になりました。Ver.2で使用したMOS-FETのオン抵抗はVer.1で使ったそれの約1/3です。シリコンチップの性能向上もありますが、パッケージの違いが大きいと思います。

Ver.2で採用したD2PAK-7
Ver.1で使用したD2PAK

MOS-FETの変更に加えて、基板のレイアウト変更と内部配線のワイアーの変更を行いました。 

Ver.1開発時、最適だと考えた基板のレイアウトですが、その後改善の余地があることがわかり変更しました。変更により基板の配線抵抗が減ると同時にチャンネル間の抵抗値の差を減らすことができました。

また、従来は太いワイアーでは配線が困難なため、十分太いワイアーを使用できませんでした。Ver.2開発にあたり音質が良く柔軟性が高いワイアーを見つけました。そのため配線の抵抗も低減できました。

コストをかければさらにオン抵抗を下げることは可能です。しかしコストと性能のバランス、そしてシステムの中で切替器のオン抵抗がどの程度であるべきかを考えるとVer.2の仕様は程よいと考えています。

これからVer.2の製造、サイトの変更など行います。4月を目標に販売開始できるようにしたいと思います。

スピーカー切替器 再発売

能率補正機能付きスピーカー切替器を音工房Zさんとソフィソナント・オーディオから販売することになりました。12月から販売開始の予定です。経緯は以下の通りです。

音工房Zさんで私どもの切替器を使っていただいています。能率を補正する機能が音工房Zさんのスピーカー開発の工程にマッチして使っていただくことになりました。今は音工房Zさんにとって必要不可欠な装置だと評価していただいています。

また音工房Zさんが所有されているA社のプリアンプとSSP-01の間に音質の差がほとんど無いのでSSP-01を主なプリアンプとして使用されているとのことです。

音工房Zさんの試聴会やメルマガなどで切替器を知った方々から当方に引き合いがあり切替器を購入していただきました。

そのおかげもあり昨年、切替器が完売しました。その後、再製造するつもりはありませんでした。一部の部品のディスコンにより基板の設計変更が必要な上、部品の価格が非常に上昇したので(日本は安倍政権の公約であったデフレ脱却がいまだにできませんが、世界はしっかりインフレ状態だとわかります)これ以上の販売は困難だと考えました。

そんな折、音工房Zさんのメルマガに「切替器の能率補正の最小単位が1dBなのでスピーカーの音圧レベルを完全に合わせられない。もっと細かく補正できれば、、」という趣旨の記述がありました。商品の満足度がいまいちだと思う反省と、音工房Zさんの紹介で切替器が販売できたことのお礼の意味で0.5dBステップで能率補正ができるファームウェアへの改造の提案を行いました。現在音工房Zさん向けカスタムの0.5dB改造品を使用していただいています。

音工房Zさんと0.5dBステップの改造について打ち合わせをした際、音工房Zさんから切替器を販売したいとのオファーをいただきました。前述のように再製造の予定はありませんでしたが検討をしてみました。設計変更が必要なうえ、部品コストが上がるので製品価格が上昇します。それでも代替品を使って製造が可能との結論を得ました。これらの情報を音工房Zさんにお伝えして相談した結果再製造することに決めました。

現在製造に向けて準備中です。どのみち基板変更が必要なので特性改善を行います。外観は従来品と全く同じですが中身は違います。したがって再発売する製品は能率補正機能付きスピーカー切替器Ver.2とします。

変更内容を説明します。

SSP-01:

信号経路の抵抗を高音質品に変更し音質と特性の向上を行います。従来品の音質も他社のプリアンプと比べてひけをとりませんが、もう一段音質の向上を目指します。

SSU-01:

従来品よりオン抵抗の低いスイッチ素子の採用、基板のレイアウトの最適化、配線材の見直しなどにより切替器のオン抵抗を低下させます。現行品のオン抵抗は12mΩtypですが10mΩ以下に減らします。

現在でもスピーカーケーブル、スピーカーの内部配線、コネクタの接触抵抗などの抵抗値の合計に比べると切替器のオン抵抗は誤差範囲かもしれません。しかし抵抗値を下げることにより切替器を挿入する影響が確実に減ります。切替器の存在が消えてトランスペアレントな状態に近づきます。

SSP-01、SSP-1とも回路の変更は多くありません。しかしSSU-01の基板のレイアウトが大きく変わります。いきなり製品を量産するのはリスクがあるので試作品を作りました。

SSP-01 基板の変更はほとんどありませんが、信頼性と作業性の向上を図りました。
SSU-01 基板レイアウトを大きく変更しました。基板と端子間の配線も見直しました。

特性を測定した結果、設計目標を達成できそうです。評価した台数が少ないので量産品のデータを測定して仕様を決定する予定です。

肝心の音質ですが、一聴して音の鮮度・生々しさが向上しました。音質向上の要因がSSP-01とSSU-01のどちらにあるのかまだ確認できていません。また試作品を数日間使用した後では音の印象が少し変化して現行品との差が少なくなったようです。今は量産の準備が忙しくてじっくり音質を評価できませんが、少なくとも切替器Ver.2は現行品より音質が良くなっていると思います。

このように切替器Ver.2の製造に注力しています。パワーアンプの開発は中断しています。パワーアンプの仕様を根本から見直せという悪魔のささやきが最近聞こえてきます。実際、パワーアンプの仕様は技術的に非常に背伸びしたものです。またロジスティック的にも問題があります。試作品の動作確認をするためだけで非常に大きなスペースを占有します。もし量産するとしたら、我が家はどうなってしまうのか??切替器Ver.2の量産出荷ができたらしっかり考えてみたいと思います。

なお、MJ誌11月号で音工房Zさんが紹介されています。

スタンドアローン・スピーカー切替器(その2)

スタンドアローン・スピーカー切替器の概仕様などを紹介します。仕様は現行品と同じです。スイッチに使用しているMOS-FETでより高性能なものが入手できればオン抵抗がさらに低くなる可能性があります。

  • 切り替え数      3(NORMALモード)/6(EXPANDモード) DIPスイッチでモード切り替え
  • オン抵抗       12mΩ typ 入力-出力端子間
  • 最大印加電圧/電流 30Vrms/100W 8Ω
  • 最大電流       180A(スイッチ素子)
  • 電源          ACアダプタ使用
  • 外形寸法       幅222mm 高さ86mm 奥行き175mm
  • 質量          約2.2kg
  • 操作          赤外線リモコン

下の写真は機能確認中の様子です。

CIMG6677

SSU-01を改造して動作確認をしています。右側手前のユニバーサル基板に追加部品を載せてあります。追加部品は数点で回路の変更は僅かです。

コントローラのファームウェアはスタンドアローン版にするために大きく変更してあります。

さてスタンドアローン版の特徴は以下の通りです。

(1) リモコンで操作可能

(2) 半導体スイッチを使用して低オン抵抗を実現

ここまでは能率補正機能付スピーカー切替器から引き継いでいる特徴です。

以下がスタンドアローン版に搭載している新機能です。

(3) 絶対位相反転機能(オプション)

(4) スムース切り替え機能

(5) DC保護機能

上記(3)~(5)について説明します。

・絶対位相切り替え機能

ステレオで左右のスピーカーの位相が逆だと非常に不快な音がします。これは左右の位相が異なるので相対位相とでも言うのでしょう。絶対位相とは楽器や声が音を発した時と同じ位相で再生するか逆位相で再生するかということです。音声信号は交流信号なので一般的に位相が逆でも関係ないですが、音の出だしなどで楽器の振動版が前に出るか後ろに下がるかの違いがわかることがあります。絶対位相の違いがわかるソースとわからないソースがあり、違いがわかってもどっちが正しいのか定かでない場合もあります。生の楽器の音に日ごろ触れている方は違いがわかりやすいかもしれません。また人の声も絶対位相がわかりやすい音源の一つだと思います。

絶対位相切り替え機能を実現するにはスイッチがもう一系統必要なのでコストが上昇します。その割には絶対位相切り替えの効果が明白に現れない場合が多いので必要性を見極めたいと思います。

・スムース切り替え機能

音楽を再生中にスピーカーを切り替えるとノイズが発生する場合があります。スピーカーAからスピーカーBに切り替えるとスピーカーAのボイスコイルのインダクタンスに流れている電流が突然遮断するので逆起電力が発生します。一方でスピーカーBの接続ケーブルやスピーカーの静電容量に充電する電流が流れます。電流が流れる時間は非常に短いですがピーク値が大きくなる可能性があります。これら逆起電力および充電電流は場合によってはスイッチや増幅器にダメージを与える可能性があります。

能率補正機能付スピーカー切替器では、スピーカーを切り替える直前に音量を絞り、切り替え直後に音量を元に戻していたので上記の問題は発生しません。しかしスタンドアローン版ではアンプの出力を制御できないので対策が必要です。アンプの出力電圧を監視し出力電圧が低い瞬間にスピーカーを切り替えることによりスピーカー切り替え時のノイズを低減します。

しかしアンプの出力電圧を監視するためにはアンプ出力とスピーカー切替器の基準電位(=グランド電位)を合わせる必要があります。アンプと切替器のグランド電位を合わせると様々な問題が発生し実現が困難でした。これを解決してスピーカー切り替え時のノイズを抑制しています。

・DC保護機能

折角アンプとスピーカーの間にスイッチが入っているので、スイッチを有効活用してアンプからDC漏れが起きた際にスイッチを遮断する機能を設けました。アンプ出力を監視してDCを検出したらスイッチをオフすれば良いのですが、スムーズ切り替え機能の項で説明したようにアンプ出力の監視をすることは困難でした。今回スムース切り替え機能の電圧監視機能を使いコントローラのファームウェアでDC検出を行っています。したがって余分な部品コストがかからずにDC保護が可能です。

メーカー製のアンプではDC保護機能がついていることが多いですが自作アンプやビンテージアンプを使っている場合には有効ではないでしょうか?とにかく邪魔になる機能ではないですし、切替器の性能を犠牲にする機能でもないので使用する上で安心感を持っていただけると思います。

もちろんどんなケースでもDC漏れからスピーカーを保護するわけではありません。DCの漏れ具合やスピーカーの壊れやすさなどで保護できない場合もあります。

以上スタンドアローン版の説明をいたしました。

能率補正機能はついていませんが、椅子に座ったまま音楽再生中でも自由自在にスピーカーを切り替えることができます。スピーカー切替器としての性能は第一級です。

現在の状況

基本機能の確認は全て終了しました。製品化可能と判断しました。

今後行う作業は

・基板の試作、評価(アートワーク済み)

・ケースの試作、評価(設計未 変更箇所は追加穴開とシルク変更)

・U/Iの最適化とファームウェアの修正、検査

コストに関しては現行品より増えるのはACアダプター程度です。しかし円安により主要部品の価格が上がっています。吸収できるかコスト計算を行いますが追加セットと同額は厳しいと思います。10%前後の価格上乗せがあると思います。

まことに勝手ですが需要があることを確認して今後の作業を進めたいと思います。

スタンドアローン・スピーカー切替器に興味をお持ちの方はご連絡くだい。

よろしくお願いします。

 

スタンドアローン・スピーカー切替器

能率補正機能付スピーカー切替器SSP-01/SSU-01はスピーカーを切り替えて音楽を楽しむために非常に有効なスピーカー切替器です。

いままでスピーカー切替器をご紹介する中で「切替器として優秀なのはわかるが能率補正機能はなくても良い。」というご希望を多くいただきました。能率補正してスピーカーを切り替えた場合の音を実際に聞いていただくとその良さを気に入っていただけるのですが、従来と同じ仕機能のスピーカー切替器を使いたいと考えている方もいらっしゃいます。

そこでSSU-01のみで動作するスピーカー切替器を検討しています。SSU-01を改造して基本動作の確認を行い目標仕様が実現できることがわかりました。

簡単に説明すると

・SSU-01のみで動作する。

・SSU-01のRJ45コネクタ部に赤外線の受光素子を配置

・ACアダプタからSSU-01に電源を供給

以上により能率補正機能こそないものの非常に使いやすく高性能なスピーカー切替器が実現できます。

もちろん製品名はSSU-01ではなく別の型番になります。

価格は未定ですが追加セットの価格より多少高い程度を目指しています。

単純なスピーカー切替器では面白くないのでいくつかの新技術を搭載しようとしています。ただいま特許の明細書を作成中ですが特許の出願後詳細な仕様を公表しようと思います。

能率補正機能付スピーカー切替器のジュニア版として考えています。

ご興味のある方は今後の情報発信にご期待ください。

プリント基板が入荷しました

スピーカー切替器のプリント基板が入荷しました。

左がスピーカー切替部の基板です。スピーカー切替用のスイッチとして使用するMOS-FETのPADがズラリと並んでいます。MCUの基板なども面付けしてあります。MCUのパッケージは0.5mmピッチのQFPなので実装をしてもらいました。量産試作の評価で切替器のオン抵抗をさらに減らす方法をみつけたので基板にはその対策も盛り込んであります。

右側はプリアンプ部の基板です。量産試作とほとんど変わっていません。

DSC_0004DSC_0002

週明けには基板への部品実装を始めようと思います。基板の検査冶具の準備も並行して始めないといけないです。