月別アーカイブ: 2014年9月

アンプ(P-300X)の修理(その3)

木曽の御嶽山が噴火して多くの方々が怪我をしたり生き埋めになっているとのこと。過去にも御岳が噴火したことがあったが人的な被害は無かったと思う。ところが今回は想像以上の被害で驚いている。一刻も早く山に居る方々が無事下山されることと、救助隊の方々に二次被害が無いことを祈っております。

また噴火に伴い飛行機の運航にも影響が出ている。私は2010年のアイスランドの火山噴火の際UKに出張していて飛行機が飛ばず足止めを食ったことを思い出す。今回の噴火が空の便に影響が出ないように、またそれ以上に農業や日常の生活に影響が出ないといいのですが、、

さてアンプの修理について。初段の電圧がおかしいので不安になったが原因がわかった。P-300Xは負帰還の抵抗とDCサーボ回路が並列に入っている。アンプの部品を一部はずした状態では負帰還用の抵抗がDCサーボ回路にとっては正帰還抵抗として作用してしまう。これが原因で初段の電圧がおかしいことがわかった。

部品を前段側から順番に実装しながら都度動作確認を行った。最後に出力段のトランジスを実装する。どうやら正常に動作しているようだ。ただ組み立てで問題が発生。出力段の代替トランジスタがオリジナル品より大きくてトランジスタの間に実装してある温度補償用サーミスタ(?)が実装できない。しかたなく下のようにサーミスタを実装した。トランジスタの取り付けネジを使って共締めしようと思ったが底板とのクリアランスが足りないので銅テープを使って取り付けた。

P300Xout

温度補償の条件が修理前と異なるがアイドリング電流の安定度には問題が無さそう。しかし時間をかけて確認する必要がある。

また交換に使った半導体はオリジナルと同じ型番の部品だがセカンドソースだった。(中国製?)セカンドソース品は最大定格などに問題があるケースがあると聞いている。

P-300Xの回路を確認すると電源電圧が変化しても増幅回路の動作点はほとんど変化しない。(電源電圧のほとんどをカスコード部で吸収しているので。)よって安全のためにAC入力を117Vに設定して動作電圧を下げた。出力電力が約70%程度に低下する。P-300Xの定格出力は150W/8Ωであるがこれが100W強になる。しかし通常使用の場合は100W出れば充分。安心のほうが大事だ。

簡単に特性の測定を行った。

出力が約1W時の周波数特性。ピンクはサブソニック・フィルタがオンの状態の特性。

P300X_frequency

 

歪率の測定は出力20Wまでしか行っていない。ドライバー段などに使用した代替部品に不安があるので最大出力まで測定するのは避けた。P-300Xのパンフレットに載っているオリジナルの特性は下記特性よりもさらに低歪みだ。製造後30年を経過しているし、今回全ての電解コンデンサを交換することができなかった。また保護回路のリレーの接点も劣化しているだろう。このことを考えれば合格だと思う。

P300X_distortion

非常に多くの部品が壊れていた。また空いている時間を使って修理したのでだいぶ時間がかかってしまった。故障の真因がはっきりしないのが気がかりだが各部の電圧は正常だ。1週間程度エージングして問題なければ完了としたい。

アンプ(P-300X)の修理(その2)

9月19日はスコットランド独立の国民投票の開票があり仕事がほとんど手につかなかった。結局独立反対が過半数となり独立はまぬがれた。本当に良かった。家内と一緒に喜んだ。

それでも独立派は数年前は誰も無理だと思っていた独立要求をキャメロンに認めさせて、国民投票に持ち込み、賛成派が過半数を占める迄にあと僅かのところまでこぎ着けた。この執念と実行力は大したものだ。キャメロンが国民投票間際にうろたえたことや、2012年に国民投票を認めたことが批判されている。

しかし某国は国民投票をすると負けるのが分かっているので国の重要な方向性を閣議決定で決めるという姑息な手段で済ませてしまった。それと比べたらUKはどんなに潔いことか。国民の将来を決める重要なことはどんなに苦しくても正直で誠実に国民の理解を得るべきである。(脱線ですいません)

さてP-300Xの部品がやっと届いた。前に書いたとおり故障の真因がはっきりしないので単純に部品を交換しても再び壊れてしまう恐れがある。そこで部品を実装する前に各部の電圧を測定して少しずつ部品を取り付けることにした。前回は初段の差動回路は壊れていないと判断したが電圧を測定すると何かおかしい。各部の動作点が微妙にずれているようだ。

ネットにある回路図を参考にして動作確認しているが回路的に理解できない部分がある。結局自分で回路のトレースをしなおした。その結果ネット上の回路図は約95%は正しいが微妙に違っていることがわかった。トレースして回路図を起こして各部の動作点や電流がやっと計算できた。

いままで理解できなかった初段の動作も理解できた。しかし電源電圧の変動や温度の変化に対しての挙動には未だにわからない部分がある。

今日は回路のトレースで終わってしまった。ひょっとすると正常だと判断した部品も壊れているかもしれない。そうなると増幅回路の半導体は全て交換となってしまう。このような壊れ方は過去に経験がない、、、 一体どのような故障なのだろうか?

明日は回路の再チェックをしつつ真空管オーディオフェアの準備も始めないと、、、

アンプの修理

知人に頼まれてまたアンプの修理を行っている。

直るかどうかわからないという条件でやっている。アンプはアキュフェーズのP-300Xというアンプ。ネットで調べてみると発売は1980年。今から34年前!それにしては外観が綺麗でキズもほとんど無い。

症状はと言うと電源は入るが音が出ない。蓋を開けて目視で確認したり、テスターで触れるところを見てみるがわからないので分解することにした。

kiban

アンプモジュールは放熱器と一体化されていてコネクタとネジを外すと簡単に取り出すことができる。メインテナンス性が良くありがたいし機構設計は参考になる。

回路図をネット上で調べたところ以前同機種を修理された方が回路図を起こしてアップされている。またP-300Xのパンフレットにも回路図が載っている!(確認したらこれは概念図であり正確な回路図ではないが)思えば30年以上前はパンフレットやマニュアルに回路図が載っていることは当たり前だった。あのころが懐かしい。

基板を外してみるとドライバーのMOS-FETとその前の電圧増幅段の抵抗が焼けていることがわかった。テスターで各デバイスのチェックを行うと左右とも電圧増幅段とドライバと出力段の全てが壊れている。

fet

回路図を見ると電圧増幅段が壊れると破壊モードによっては連鎖的に出力段まで壊れることがわかる。しかし左右同時に破壊されるにはなにか根本の原因がある筈。それを探したが見つからない。なんとも言えないが故障の原因は誘雷?かと思いたくなる。

さすがに30年以上前の製品なのでオリジナルの半導体部品を入手するのが困難だ。それでも一部はオリジナルが入手可能。その他は代替品を探して発注した。

部品が届いたら慎重に進めないとまた壊れてしまうので作戦を考えておくことにする。うまく修理できればいいが、、、

サイトウ・キネン CDコンサート 再び!

度々CDコンサートの話題になってしまうが本日もキッセイ・ホールを訪れた。

今日はマーラーの1番を演奏するのでこれを聞くのが目的だ。

演奏・録音・音とも素晴らしく大変感激した。

私はサイトウキネンのマーラー1番を聞くのは初めてだった。私が良く聞く同曲の演奏とはかなり違いビックリした。とにかく演奏のダイナミックレンジが大きい。ピアニシモは思いっきり小さい音で演奏してためにためてその後大きな音になる。この差が凄い。テンポの差も大きい。これでもかとゆっくり演奏した後は一気呵成に駆け抜ける。そして音の大きさとテンポだけでなく演奏の表情におけるダイナミックレンジも広い。例えば第一楽章は霞がかかった水墨画のような趣きで演奏するが三楽章や四楽章は迫力のある分厚い演奏をする。聴きながら次はどんな仕掛けをして来るのだろうとわくわくする感じだった。

サイトウキネンの名手だからこそ小澤の意図を具現化できた名演奏ではないかと思う。

音も良い。先日のブラームスは弦が多少ざらついて聞こえたが今日の録音は実に透明感がある録音。耳障りな感じが一切ない。新さんによると初期のサイトウキネンはフィリップスが録音していたが、ある時期からデッカに変わったそうだ。マーラーの1番はデッカの録音。それも関係しているかもしれない。しかし1980年代のディジタル録音機器と2008年のそれとでは性能が大きく違うのでこちらも大きな要因だろう。

よく1950年代の録音が良くそれ以降は聞くべき録音が減っていると言われる。しかしこの録音は過去の名録音とも比肩できるものではないか?

名演奏・名録音を良い再生装置で聴いて本当の感動を覚える。今日は音を聴いていて鳥肌が立つことさえあった。常設の場所で音を練り上げるのでは無く、半日程度でセッティングしてこれだけの音を出してしまうのだからちょっと悔しい。と嫉妬を感じるほどの音でした。(お世辞でなく)

コンサートの冒頭では中野雄さんの興味深い話を聞くことができていろんな意味で良いコンサートだった。

あまりに良かったのでロビーの売店でマーラーの1番のCDを買い家に帰って聴いた。もちろん良かったがキッセイで新さんのシステムで聴いたほどの音では無かった。再生空間の大きさが主要因としておきたいが、、、

クレデンザレコードコンサート

私の住んでいる松本市は3ガクの都と言われている。

岳都、学都、楽都の3つのガクの都市だ。

最初の岳は山岳の岳。平成の合併により旧安曇村も松本市になったので槍ヶ岳や穂高岳も松本市にある。合併前から松本にあった美ヶ原も含めると松本には、槍ヶ岳、穂高岳、常念岳、焼岳、乗鞍岳、美ヶ原となんと6座も深田百名山がある。したがって岳都の名称は誰もが認めるところだろう。

次の学都はちょっと厳しい?旧開智学校や旧制松本高校があり現在は信州大学があるのが学都の由来だが松本が他の都市に比べて特別なわけではない。3ガクにするための苦しいこじつけのような気がする。

最後の楽都は岳都ほどではないが多くの人が受け入れるのではないだろうか?有名なスズキメソードがあるしサイトウキネンフェスティバルもある。人口25万人程度の小都市としてはホール等の施設を含めて比較的音楽環境に恵まれていると思う。

サイトキネンの時期にはサイトウキネンの演奏だけでなく音楽パレードや先日ブログに書いた新さんのCDコンサートなどが行われる。本日行ったクレデンザレコードコンサートもその一環だと思う。松本の街の中が音楽で溢れている感じがして素敵な季節だ。

クレデンザとは真空管などの増幅器を使用しないアコースティック方式の蓄音機の最高峰である。当然クレデンザで再生するレコードはSPレコードである。

kuredennza

私はSPレコードには馴染みが無くほとんど聴いたことが無い。今までポータブル型の蓄音機や電気再生で数回SPレコードを聞いたことがある。古い録音のSPレコードをアコースティイック再生しても意外に音が大きく心に染み入る魅力的な音がするという印象を持っている。

しかしSPレコードや再生装置の入手などに手が廻らない。そのためSP再生は気になりながらも踏み出せないでいる。それでも機会があれば音を楽しみたいと思っているので今回のコンサートを聴きに行った。

蓄音機の最高峰であるクレデンザを聴いたことが無いのでそれを聴くことも大きな目的であった。

kuredennza2

ホテルの広いホールでコンサートを行ったため蓄音機の音をマイクで拾いPAで流したのが少々残念。後ろの席の人にも音を聴いてもらうためには致し方ないが、、、

それでも音は充分に魅力的で音楽に引き込まれてしまう。音楽を楽しむならこの音で充分じゃないかと思う。情報が少ない分、より音楽に集中できる。本当に味わい深い音だ。

以前聴いた電気再生のSPはスクラッチノイズがかなり大きかったがクレデンザはスクラッチノイズが気にならない。スクラッチ音の差はSPの盤質によるものかもしれないが再生方式の違いも大きいと思う。(本日竹と鉄の針を比較したがそれでも違った)

素敵なコンサートを主催してくださった松本SPレコード愛好会の皆さんありがとうございました。

ところでコンサートには新さんが解説者として来場されていた。休憩時間に挨拶をしたところサイトキネンCDコンサートの感想を書いた私のブログを見て下さったとのこと。恐縮してしまいました。帰ってから失礼なことを書いてないかもう一度読み返してしまいました。

新さんが所有するSPレコードのコレクションをCD化して飛鳥新社から「モーツアルト・伝説の録音」として発売されるそうです。非常に魅力的なCDですが、価格が、、、

松本では10月24日 キッセイホールでこのCDを聴く催しがあるそうです。是非行きたいと思います。