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JAXAのミニロケット

1月15日のミニロケット打ち上げが失敗したそうです。大変残念なことです。

失敗した事実が報道されてから書いても、「後だしジャンケン」のようで説得力がありませんがこの件について少し記述したいと思います。

昨年、ミニロケットの打ち上げコストを下げるためにスマホ用など民生用の部品を多用しているとの報道を見ました。その際「本当に民生用半導体で大丈夫?」という思いが頭をよぎりました。

そして1月15日に「通信が途絶えてしまった」というニュースを聞きました。やはり原因は民生用の半導体にある可能性が高いと思います。新聞などにもそのようなことを書いてあります。

私が会社勤めをしていた時の話です。私達が開発した業務用コンピュータを航空機内のシステムに使うプロジェクトがありました。システム・インテグレーター(SIer)がいくつかの業務用コンピューターを調達して機内で運用するシステムを作り航空会社に納品しました。もちろん飛行機の運航に関係するシステムでは無いので、民生用の製品でも使用可能でした。

システムのテスト運用が終わり本稼動が始まると色々とトラブルが発生しました。SIerだけでは解決できなかったので我々にもトラブル対策に参加して欲しいとの依頼が舞い込んで来ました。航空機内システムの計画の初期段階で我々の製品を使うシステムには反対しました。「絶対迷惑をかけない」という話をもらってシステムを構築するためのサポートを行っていました。そんな経緯があったのでトラブル解決には乗り気ではありませんでした。しかし、エンドユーザーに迷惑をかけるわけにいかないのでしぶしぶトラブル対応を行いました。

トラブルの内容は、機構的なこと、電源廻りに関することなど複数ありましたがその一つにデータ化けがありました。コンピュータのSRAM内部のデータが一部化けてしまいます。

データ化けの原因が色々考えられたので、試験をしてそれぞれの要因をつぶす作業を行いました。私は宇宙線によるソフトエラーでデータ化けが発生するのではないかと推測しました。宇宙線はα線、β線などの素粒子です。高度が高い航空機内では地表より宇宙線の量が多いので、これによってデータ化けが発生する可能性があります。私はデータ化けの現象から考えて宇宙線が原因の可能性が非常に高いと考えていました。

しかし当時、高度10,000m程度では宇宙線の量は地表とあまり変わらないというのが定説でした。そんなこともあり私が主張した宇宙線説は省みらませんでした。また宇宙線の影響を試験したくても試験装置がありません。納得はできないものの、データ化けは他の要因が原因であるということで幕引きになりました。その後、航空機内システムはデータを2重化するなどの対応によりデータ化け対策をしましたが、トラブルがあったためそれ以上普及せずフェードアウトしました。 結局、色々と振り回されて、その時設計していた製品の納期が遅れて、悪い思い出だけが残るプロジェクトでした。

その後しばらくして、高度10,000m程度でもソフトエラーが発生するというIBMの論文を見つけました。やっぱり、と一人ひそかに溜飲を下げたものです。

思い出話が長くなりましたが、ミニロケットについてはこの時の記憶が頭の中に蘇って来ました。

当時の半導体のプロセスは1ミクロン~0.8ミクロンくらいでした。現在スマホなどで使っている半導体は15nmとか25nmです。半導体はプロセスが微細になるほど誤動作しやすくなります。半導体にα線が衝突した時に与える影響は半導体の面積が小さいと相対的に大きくなります。プロセスの比率から考えれば今の半導体は当時の半導体より宇宙線の影響を2桁以上多く受ける筈です。

当時はα線がソフトエラーの主因だと考えられていたのでシリコン表面のポリイミド保護膜を厚くして対策していました。しかしプロセスが微細になるとβ線でも誤動作するかもしれません。β線を遮蔽することは非常に困難です。ミニロケットに厚い鉛のシールド箱を搭載するわけに行きませんし、今は鉛フリーの時代ですから。

ソフトエラーの対策は

(1) 古いプロセスを使って宇宙線の影響を減らす

(2) その上で、回路の冗長化(多数決、エラー訂正など)する 以外ないと思います。

民生用の半導体ではプロセスが微細過ぎますし冗長性が無いと思います。

ミニロケットの故障の原因調査の結果を見守りましょう。

あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。

本年が皆様にとって良い年になるようお祈り申し上げます。

2017年になって早くも10日近く過ぎてしまいました。もはや新年の挨拶の時期ではなく寒中見舞いの時期です。まことに時節を逸した挨拶申し訳ありません。

昨年10月に身内が事故に遭ってしまいました。ほぼ同時期に一人暮らしの親の体が弱って来ました。それらの面倒を見るのに時間が取られています。大変ですが生まれてから就職するまで(それ以降も)面倒を見てくれて、様々な迷惑をかけて来た親ですから恩返しするのは今でしょ!という気持ちです。私が会社勤めならほとんどを家内に押し付けてしまったと思います。しかし今の仕事は時間に融通がきくので家内と分担して対応しています。家内も非常に大変だと思いますのでこれからも協力しながらやって行こうと思います。

そうこうするうちに(オーディオとは全く関係ない)副業の成果物を販売したらどうかという話をもらいました。その商品化の検討を昨年末から始めました。今は商品価値があるかの評価をモニタの方にお願いして開始したところです。

そんなわけで本業であるパワーアンプの設計が止まっている状況です。しかし今年の前半には試作品を作りたいと思い時間を見つけて作業を進めています。

暦によると私は今年「八方塞がり」だそうです。私は年周りなどほとんど気にしません。若い頃なら「なんだ八宝菜かい?上等じゃねえか!」と言って一笑に付すところですが多少は歳を重ねて成長しています。様々なことに注意を払いつつ謙虚に過ごそうと思います。

DP-3000

私事が多忙になり仕事が進みません。こまったことです。

MJ12月号にDP-3000の駆動アンプの記事が載っています。私も40年ほど前にバイトで稼いだお金でDP-3000を購入し自分で箱を作ってプレイヤーを作りました。これは今でも保有しています。しかし20年ほど前から回転が不安定になりました。なんとかしたいと思って10年ほど前にDP-3000の駆動回路をトレースしてみました。

回路を解析したところ以下のような動作です。

(1)プラッターに記録されている磁気信号を増幅し検波する。

(2)検波出力を積分する。

(3)積分出力と基準電圧を差動アンプに入力する。

(4)差動アンプの出力でインダクションモーターを駆動する。

つまり回転数が上がると検波出力が増えるのでモータードライブ電圧を下げて回転数を減らす、回転数が下がると検波出力が低くなりモータードライブ電圧を上げる動作をするというフィードバック制御です。インダクションモーターは駆動する電圧によりトルクが変化するので電圧が高いほと回転数が早くなるようです。

上記の動作は速度制御です。しかし回転が安定しないので水晶発振器との位相制御を加えようと考えました。私は電子工学系なのでモーターの知識がほとんどありません。インダクションモーターを含む制御系の解析は結構面倒だなあ、、、など思っている間に10年以上過ぎてしまいました。

そうしたらMJに記事が載っていたので「先を越された!」とちょっと悔しい思いをしています。

DP-3000のプレイヤーに載せたアームをもう一度使ってみたいのでMJの記事を参考にして復活を考えてみようと思います。

手持ちのDP=3000のモーターもしくはプラッターの磁気記録に問題があるかもしれないと恐れています。先ずは位相制御を加えると回転が安定するか簡単に確認してみたいと思いました。

ソニーの電池事業を売却

ソニーのリチウム電池事業を村田製作所に売却するというニュースを読みました。

私が会社に勤めていた時に業務用の携帯コンピュータの設計をしていたことがありました。1980年代はニッケルカドミウム(ニッカド)電池を使っていました。ニッカドはなかなか難しいデバイスで品質問題を起こしたことがありました。それ以降電池を使った電源の設計には非常に慎重になりました。

その後ニッカドよりも容量の多いニッケル水素電池が出荷され始めました。ニッケル水素電池の充放電管理はニッカドよりもさらにクリティカルで注意が必要です。その割には容量がニッカドの1.2倍程度なので設計者としてモチベーションが起きませんでした。

時を同じくしてリチウムイオン電池開発の情報が入って来ました。海のものとも山のものとわかりませんが非常に魅力的な仕様でした。ATバッテリが最初にサンプルを出しました。確かATバッテリの吉野さんという方がリチウムイオン電池の基本技術を開発したと思います。直接話を伺いました。

リチウムイオン電池の魅力は容量あたりの重量が軽いことで携帯コンピュータには非常にありがたいことです。また充電制御が比較的簡単です。ただリチウムというと発煙・発火などの心配があるので気になりましたが製品の競争力を高めるためにすぐさま検討・評価を始めました。

するとソニーからもリチウムイオン電池の紹介がありました。ATバッテリが基本技術を持っていると考えていたので当初は特許の問題など???でしたが打ち合わせを重ねるうちにソニーのリチウムイオンの可能性も膨らんで来ました。そしてソニーのハンディカムにリチウムイオンを使う予定との話を聞いて段々ソニーのリチウムイオンを使う意向を固めました。

基本技術ではATバッテリが先行していたと思いますがソニーはバッテリを使う最終製品を持っていたので先にバッテリの商品化に成功したと思います。それが私達がソニーのバッテリを採用すると決めた理由の中で大きなものです。

私達はハンディカム用に発売される前にバッテリパックの仕様とサンプルの提供を受けて検討しました。携帯コンピュータでは特別仕様が必要なのでカスタム品の提供を打診しました。すると非常に積極的に対応していただきあっという間にカスタム品のサンプルを提供してくれました。

リチウムイオン電池は初物なので私達はかなり大規模かつ慎重な評価を行いソニーと情報共有をしました。この情報はソニーにもかなり有用だったと思っています。そして従来のニッカドやニッケル水素を凌駕する満足すべき結果を得て商品化を行いました。

これはおそらくビデオカメラ以外の機器としては初めてリチウムイオン電池を使った製品だったと思います。軽さが重要な携帯コンピュータではそこそこ売れてロングセラーになりました。

これは私が会社に貢献した数えるしかない製品の一つです。

その当時はソニー・エナジーテックという会社でした。開発の方も営業の方もソニー出身で積極的で恐いもの知らずの感じでした。私も若かったので製品の競争力を高めようとしてお互いに共鳴してどんどんと進んだように思います。

20年以上も前のことです。

雑記

7月になって既に半分ほど経ってしまいました。

あいかわらずパワーアンプの設計をしています。パワーアンプの中で最も歪が多いのは出力段です。設計中のアンプは出力段に特徴があります。増幅回路を複雑にせず出力段の歪を減らすための方法を追求しています。

今はアンプ本体の基本回路がほぼ固まって、特徴的な部分の設計をしています。この部分の基本的なアイデアの特許検索を行いましたが先行技術は見つかりませんでした。多分商品化できそうです。これからは実現の可能性や音質を試作して検証する必要があります。参考にする事例が無い回路・方式を考えて商品化する過程がエンジニアとして最も生きがいを感じる瞬間です。

わからないことがあると幾つもの文献(主に半導体関係)を読み込んで理解・検討しないとならないので大変時間がかかってしまいます。会社勤めの頃は絶対的な納期がありそれに向けて必死で頑張って来ました。今は納得行く製品を作りたいのでじっくり検討をしたいと思います。(会社で品質が悪い製品を作っていたのではないです。しかし技術的な疑問や好奇心があってもじっくり調べる余裕がありませんでした。製品の魅力を高めるためにあと一押しをすることはできませんでした。)そして以前のように死ぬほど頑張る必要もないので時間がかかってしまいます。(年を取って集中力が衰えたことも多いに関係していますが、、、)

さて突然話が変わりますが、我が家の暖房は主に薪ストーブです。薪の半分は購入、半分は自己調達です。私の住んでいる地区はりんご農家が多いのその木を頂いていましたが最近は薪ストーブを使う人が増えて手に入りにくくなりました。近くの家で伐採した木やはぜ木などを頂き足りない分を購入しています。

今まで薪を購入していた林業会社のおじさんが高齢で玉切の薪の配達ができなくなりました。そこで薪を販売している会社を探していましたが、なかなか見つかりませんでした。そんな事情があってやっと見つけた林業会社からつい最近薪が届きました。

本来なら12月~1月にかけて薪を割り、次のストーブシーズンに焚きます。薪の乾燥に最低1年は欲しいからです。今回は乾燥時間が短いのでちょっと心配ですが半年でも許容範囲でしょう。

薪が届いてから毎朝1時間ほど薪割りをしています。樹種によりますがこの木は早く割らないとどんどん割りにくくなります。薪割り場が木陰にあるので晴れた日には日陰になり、雨の日には傘代わりになりとても快適です。IMG_1775

昨年までは薪を2トン配達してもらっていました。今回は配送料がかかるので節約のために4トン配達してもらいました。これだけ割るのには時間がかかります。薪割りが終わるまでランニングができませんが薪割りも結構運動になります。

薪割りで汗をかいて、シャワーを浴びていざ仕事の今日この頃です。 これも納期が遅れる理由の一つ?

Brexit(2)

6月24日は朝からBBCのWebサイトやテレビでBrexitの投票結果を見つめていました。投票結果が気になり仕事が手につきませんでした。

世論調査で残留優勢と報じられて投票の2-3日前から株が上昇していました。私にはそれが却って不気味に感じられました。それなので離脱の可能性もありと思っていましたが最後は残留してくれると期待していました。結果はまさかの離脱。

日経平均は1200円ほどの大暴落、NYダウも$600もの下落となりました。

これから一体何が起こるのか不安で一杯です。先日の日銀のマイナス金利でさえ導入後しばらくしてから日銀が予想していなかったデメリットがすこしづつ判明して来ました。これよりも格段に複雑で規模と影響力が大きいUKのEU離脱は今後具体的な弊害がどんどん明らかになって来るでしょう。その度に株も為替も乱高下を続けることになりそうです。

私のUKの友人も朝4時に起きたら離脱が決まった!とかなり驚いていました。またポーランドからUKに来た友人が2人居ますがこれからの交渉でどうなるか心配です。既に居住して税金を払っている人を追い出すことはないと思いますが。離脱前に駆け込みで移住する人も増えるでしょう。そして私が住んでいたスコットランドが再び独立を考えていることも心配です。

その後の報道を見ると離脱派も「まさか本当に離脱するとは!」とびっくりしているそうです。また残留派は再投票を求める署名を行っていてその数はどんどんと増えているようです。UKの人達は熟慮の上に離脱を決めたのではなく感情の赴くままに離脱を選択してしまったのです。どのような法律によって今回の投票が行われたかわかりませんが法的拘束力は無いと言われています。(ただの参考意見?それもよくわかりませんが)ですからどんでん返しもあるかもしれませんが大義名分が無いと国内の分断がさらに大きくなります。

今回のような事態に至ったのにはいくつかの必然性と不運があると思います。

(1) EUが制度的に不完全で経済政策ではドイツを利するように進められた。

ギリシャ危機の時にも言われたように通貨は統一で財政政策は別々。経済力や生産性が異なる国家が単一通貨になることで生じる歪はいつか噴出します。東西ドイツ統一の成功体験によって行われたかもしれませんがそれより規模も参加国の経済状況・国民性の違いがはるかに大きいです。さらにECBの金融政策はドイツ一辺倒なのでドイツの一人勝になります。そのドイツ国民もPIIGSなどに財政支援をすることに不満を感じています。結局EU内の勝ち組も負け組みも一般の国民はEUによって不幸になっていると感じています。これはEUの制度設計に問題があるためでしょう。

(2) EUからの移民問題

東欧諸国がEUに加盟し多くの移民がUKに入国しました。私がスコットランドに行った2007年の時点で100万人以上の人が東欧からUKに来たと聞きました。ポーランドの人は非常に優しく勤勉です。日本人としてシンパシーを感じます。それゆえに英国人の雇用が奪われることもあったと思います。ポーランドなど東欧の人はUKは英語が使える、第二次世界大戦中の経験があるのでドイツには抵抗があるなどの理由で大陸内ではなく島国のUKに多く移って来ました。ですからUKでの移民問題はEUの中でも深刻かもしれません。

(3) イラク、シリアなどの難民問題

国民投票の時期に合わせてこのような問題が起きなくても良いのにと思います。しかしこの問題は米英が招いた問題なので回りまわってブーメランのように帰って来たと思います。むしろ大陸のほうが大変でしょう。

(4) UKと大陸の距離感

私が感じたことですがUKの人は話の中でフランスやドイツに対する反感(敵対心ほどではないがシニカルな感情)を表すことが往々にしてあります。スコットランドの人でさえそうなのでイングランドの人はもっと強いと想像します。これは世代がいくつか代わらないと克服できない感情でしょう。

(5) UKの経済政策

UKは金融などに力を入れすぎて農業・水産業・鉱工業にあまり力を入れていません。これは私がUKで働いて実感したことです。政府はそれなりにやっているつもりでしょうが結果は違います。サッチャー以来の経緯を私は正しく理解していませんが弱者を切り捨てて来たことは確かです。その時に切り捨てられたお年寄りが今回は離脱票を投じたと思います。高齢者ほど離脱支持が多かったのは偶然ではないと思います。これ以外にも格差が存在することは否めません。

(6) キャメロンの軽率な行動

一昨年のスコットランド独立の際もキャメロンが安易に住民投票を認めました。最初はたかをくくっていたのに投票直前には大慌てをしました。今回も全く同じパターンです。国民投票の大安売りはどうなんでしょうか?

私がUKに居た時にデビッド・キャメロンがゴードン・ブラウンから政権を奪いました。その時には過半数を持たず第2党のクレッグと政権構想をわずかな期間でまとめ上げあっという間に政権を作りました。その頃の日本の政権と比べると手際のよさがありました。さらに英国では政治家を人間・能力・品性などでスクリーニングし国を背負える人だけが政治家になれると聞いていました。キャメロンの演説を聞いて(日本との比較も含めて)政治を任せることができる人だと思いました。ただし保守党の内向きな政策には不安がありましたが。

そのキャメロンがいったいどうしたことなんでしょうか?もう一度言いますが国民投票を安売りしすぎました。

10月までに次の首相を決めて後継者に移行交渉を担ってもらうとのことです。私も最初は当然だと考えました。でも良く考えたら今回の結果を招いた責任を取って世界に対する不安拡大が最小になるための努力と次の後継者への早急でスムーズなバトンタッチを全力で行うべきです。

(7) 英国民の誤算

私が英国民に持つイメージはとことん議論して納得しないと結論を出さない人達です。実際に会議をすると凄く議論します。日本人の私が口を挟むのは結構大変です。しかし会議が脱線して10分で終わる会議が1時間以上になることもよくありまました。中身が無い議論をしていることも多いのです。今回のように重要な案件では脱線が少なく充分議論したと思っていました。ところが先に書いたようにあまり考えずに投票したり、他人任せの投票をしたりと意外でした。

そしてEU離脱後のビジョンがはっきりしません。そう言えばスコットランド独立の際も独立後のビジョンはクリアではなかったです。英国民はそんな状態では普通は納得しないはずですが、、

 

いずれにしてもUKの国民が決めたことです。尊重するしかありません。そしてこれがただのちゃぶ台返しではなく50年-100年後に良い結果を得るための生産的な決断であって欲しいと思います。全てはこれからの関係者の知恵と行動によります。

その一方で国民投票の恐ろしさを改めて教えてもらいました。成熟した国と思っていたUKでさえこういうことになりました。私達も心しないとなりません。

思い入れのある国なのでオーディオとは関係ないですが感情的に書いてしまいました。

でも言い訳をするとUKには以下のようにオーディオメーカーが多いのでそれが原因で感情的になりました、、

LINN、TANNOY、KEF、ProAc、B&W、Quad、Garrard、Monitor Audio、Code、SME,Goodman、Cambridge Audio, Harbeth, dCs  などなど

Brexit

パワーアンプの詳細設計の段階になり定数決定、部品選定などを行っています。部品選びには苦労しています。特に良いトランジスタが無くて大変です。

以前はトランジスタといえばNEC、三菱、日立、東芝、三洋、パナソニック、ソニー などが多様なトランジスタを製品化していました。現在はNEC,三菱,日立がルネサスになりオーディオ用に使えるトランジスタを作っていません。パナソニックもしかり。三洋の半導体はONセミコンダクターに売却されました。東芝はバイポーラトランジスタを作っていますが品種はかなり絞られています。ソニーはディスクリート半導体を作っていません。今や海外の半導体メーカーのほうが選択肢が多いほどです。大きな流れとしてディスクリートトランジスタは増幅よりスイッチングが主流です。そうなるとバイポーラトランジスタよりMOSFETのほうが優れているのでそちらは充実していますがバイポーラは品薄です。

とりわけコレクタ損失が1~10W程度のトランジスタを選ぶのが大変です。

さて6月23日に英国がEUに留まるか離脱するかの国民投票があります。2014年9月にはスコットランドの独立を問う国民投票があったばかりです。英国は大変なことが続きます。英国のEU離脱を巡る背景や思惑そして及ぼす影響は非常に複雑で全てを理解できるものではありません。

私は単純に自分の都合で(世界経済への悪影響)英国がEUに留まることを期待しています。

しかし英国民の立場になって考えると違う面が見えてきます。EUの中央政府によって英国の主権が奪われていると離脱派は主張しています。EUは統一国家を目指しているので今後ますます英国の主権が損なわれるのは事実だと思います。

私が英国民なら国家のGDPが一時的に低下しても50年~100年後のために自らの一票で国家の方向を決めたいと思うでしょう。ですから多いに迷うと思いますが人間・国家としての尊厳を守るために離脱を支持すると思います。ナショナリズムだと言われればその通りで新しい国家の形を目指すことも必要かもしれませんが、、、

スコットランドはEU残留派が多いので、仮に英国がEUを離脱すると3年以内にもう一度独立の国民投票を行う動きがあるようです。そうするとUKはもう大騒ぎです。

来る6月23日 景気の腰折れにならないためにも残留して欲しいものです。 人は立場によってコロコロ変わるものですね ^ ^;

長野市芸術館

先日のブログでチック・コリアと小曽根真のコンサートについて書きました。そこで長野市芸術館のことにも少々触れました。

今日の朝日新聞の記事に長野市芸術館のことについて書いてありました。その記事を引用しながら少し感想を述べたいと思います。

記事の要約は

  • 長野市芸術館には舞台が見えない席(見切れ席)があり設計事務所がミスを認め改修費用を負担
  • 音楽の本場欧州のホールには見切れ席があるのが普通。若者が安く座れるので歓迎されている。
  • 日本は見えることを重視している。
  • 欧州の現状に倣う必要は無く見えることが大事という意見がある。

論調として欧州でも見えないことがあるので日本でもあまりうるさくする必要が無いのでは?日本人は音楽を聴覚だけで鑑賞できず見ることを求めているのでは?と感じられます。欧州で見切り席があるのは当時の建築の限界(建築強度など)によるもので意図して作ったものではないでしょう。その結果格安の席として提供せざるをえなかったと思います。

現代のホール設計では建築技術、事前のシミュレーションなどにより見切り席が無いことが常識だと思います。またホールでは音楽だけでなく演劇やオペラなども上演されるでしょう。上記記事は工学の問題を芸術の問題に摩り替えているような気がするのは私だけでしょうか?

チック・コリア & 小曽根真 Duo コンサート

5月18日、長野市芸術館にチック・コリアと小曽根真のDuoコンサートを聴きに行きました。

芸術館は5月8日に杮落としをしたばかり、ピカピカのブランニューなホールです。このホールは震災復興の影響で工数不足、東洋ゴムの免震装置の問題、そして設計ミスによって一部の席から舞台が見えないなどが原因で完成時期が1年以上遅れてしまいました。それでも今月無事オープンすることができました。

長野県内に良いホールが出来て良いコンサートが開催されるのは嬉しいことです。

チック・コリアと言えば私がJazzを聴き始めた頃、あの「Return To Forever」が発売されまさに溝が磨り減る程聴きました。それからも継続して注目しているピアニストです。一時期エレクトリックとアコースティックのアルバムを交互に出していましたが今はほぼアコースティックかなあと思います。(全部聴いていないのでわかりませんが、、)

小曽根真は何度かライブを聴いていますがあまりCDを持っていません。小曽根のスタイルは変幻自在ですが基本的にチック・コリアに似ていると思います。ビッグ・バンドを率いるなど才能溢れる演奏家だと思います。

小曽根と彼の師匠であるゲイリー・バートンとのDuoを聴きましたがそれはチック・コリアとゲイリー・バートンの演奏を彷彿とさせるものでした。二人ともバド・パウエル~ビル・エバンスから続くモダン・ジャズの主流の中に位置しています。今回のコンサートも小曽根=ゲイリー・バートンの共演と同じく師弟共演と言えると思います。

全ての演奏の曲名はわかりませんが、、以下のような演目でした。

  1. チックコリアのオリジナル?
  2. Bud Powell (アルバム Remembering Budの中の曲)
  3.  Someone to watch over me (スタンダード)
  4. Spanish Song (本日のために作った曲)
  5. Children Song No.20
  6. Mozart 2台のピアノのための協奏曲 (N響と競演 7月に放映予定)
  7. Mirror Mirror (ゲイリー・バートンとのLPの中の曲)
  8. Snap Shot (小曽根のオリジナル初演)
  9. Fantasy for two pianos ( チック・コリアのオリジナル)
  10. アンコール ?

感想です。

スリリングながらリラックスした演奏で、次から次へとメロディが沸き出て来ます。お互いに刺激しあいスパイラルアップしている感じです。どちらかがアドリブを弾くともう一方がコードを弾いてバックアップしますが単純なバックでは無く相手をインスパイアーします。お互いのキャッチボールが自由自在で聴いていて本当に楽しかったです。

そして2人の演奏が非常に似ていました。手を見ないとどちらが弾いているのかわかりません。もしかしたら小曽根がチックに合わせていたかもしれません。あるいはチックが小曽根を引き込んでいたということでしょうか?

ホールの響きが良いのかピアノを強打しなくてもクリアに力強く音が響いていました。(私の席は最後部でした)音響的に優れているホールだと感じました。

ただ家内は前の席の人が邪魔でステージが見えなかったと言ってました。改修した席かどうかわかりませんが視認性には問題があるかもしれません。

いずれにしても楽しい時間をすごすことができました。

会場でチックと小曽根のDuoのCDを販売していたので買いました。このCDは過去の二人の共演のコンピレーションでした。中にはゲイリー・バートンを含めた3人の共演もあり非常に興味深いものでした。Chick&Makoto

LPのディジタル化 ~ Wynton Kelly

私は仕事中にはいつもBGMを聞いています。時々ネットラジオを聴くこともありますがだいたいは音楽データをLinnのネットワークプレイヤーで再生しています。

CDはほぼRippingしてありますがLPのディジタル化はほとんどできていません。仕事しながらLPの音楽を聴きたいと思いますが手間がかかるしレコードが終わる度に仕事を中断しないとならないので普段は聴けません。そこで最近仕事の合間に少しずつLPをディジタル化しています。

最初はどうしても聞きたい定番のLPをディジタル化しました。その後アーティスト毎に集中してディジタル化しています。 Wes Montogomeryに続いて最も好きなギタリストのTal FarlowのLPをディジタル化しました。そしてこの2-3日でWynton KellyのLPを取り込みました。

Wyntonはリーダーアルバムも多いですがサイドメンとして参加したアルバムのほうがはるかに多いです。彼の演奏を全て聴くことはとてもできないですが今回は手持ちのLPの彼のリーダーアルバムを7枚ほど聴きました。仕事をしながらなので集中して聴いたわけではないですが、、、

その結果彼の私にとってのベスト演奏はやはり”Cannonball Adderley Quintet in Chicago” の “Stars Fell on Alabama”だと再確認しました。

ダウンロード

このアルバムは1959年の録音です。当時のマイルス・デイビスsextetからマイルスが抜けたメンバーによる録音です。 Stars Fell.. はテーマに続いてキャノンボールのソロが1コーラス。このソロも最高に乗りが良くしびれます。

続いてWyntonのソロが1コーラス続きます。彼のソロの前半は原曲のコード進行に忠実にオーソドックスな演奏ですが彼の代名詞でもある転がるようなソロが少しずつ出てきます。そして後半にはこの軽やかなソロが全開になります。そしてWynton(多分)の唸りが明確に聞えてきます。彼の唸り声が聞える演奏はあまり無いのではないでしょうか?

1コーラスの中に起承転結を見事に詰め込んだ素晴らしい演奏だと思います。

LPのディジタル化をしながら過去の記憶を再発見したり新しい気づきがあるので楽しいです。

LPをディジタル化する機材にはSound Blasterを使っています。これでも充分LPのたたずまいを記録してくれます。できればもっと良いCODECを購入したいと思います。