612Aエンクロージャ

 モノラルシステム用に10年以上前に604-8Gを1本譲ってもらいました。これは 1本のみ、ネットワーク無しだったので格安で入手できました。自作の箱や平面バッフルに取り付けて聞いていましたが、やはり正式な箱に取り付けて聞いてみたいと考えていました。そして平面バッフルは場所を取るし不安定です。

 箱作りを始めました。604のエンクロージャは612A、612C、620Aなどありますが620はサイズが大きく重いので除外します。604と言えば銀箱と呼ばれる612Aがスタジオモニターとして広く使われていたので作るならこれしか無いでしょう。

 612Aの図面を入手すべくネットで検索してみました。612Cの図面は容易に見つかりますが612Aはなかなか見つかりません。

 漸く見つけましたが図面の寸法や文字が不鮮明で判読するのに苦労しました。

 図面が掲載されていたサイトによると612Aはアイコニックのエンクロージャと同じものだそうです。言われてみればアイコニックと612Aは似ています。今まで気が付がつきませんでした。

 アイコニックは1937年にランシング社によって開発された映画館向け2wayシステムです。それ以前のウエスタンや自社製のシャーラー・ホーンなどのスピーカーよりはるかにコンパクトなのに高性能なのでかなり売れたそうです。

 1945年に604が発売され、アイコニックの箱に入れたものが612システムと呼ばれたそうです。これに先立つ1941年にアルテック社がランシング社を買収しアルテック・ランシング社になっています。ランシング氏が開発した604を8年前に自分が開発したアイコニックの箱に収めて612システムができたのでした。

 ちなみに、612Cと620Aは612Aの発売から30年後の1975年に上市されました。1950~1960年台にはモニタースピーカー市場を独占していた612システムですが、1971年にJBLの4320がリリースされると、4320の時代にマッチした性能によりALTECのシェアが徐々に切り崩されてきました。

 それに対抗するために612Cと620Aが発売されたと推測します。612Aは板厚が薄く箱鳴りがするので電子楽器が台頭してきたロックやJazzのソリッドな音のモニターには難があったと思います。おそらく612Cは612Aとの置き換えのためにサイズの互換性を保ちながら強固な箱でパルシブな音の再生を目指したものと思います。620Aは互換性を捨ててより広い周波数帯域を目指したものだと思います。

 今、気が付きましたが4320と612のサイズはほぼ同じです。JBLはモニター進出の第一歩として612の置き換え需要を狙って実績を作ろうとしたのですね。

 話が横道に逸れてしまいました。なんとか612Aの図面を入手したものの、米松合板が入手できません。ウッドショックの影響です。建材として使われる12mm厚の在庫はありましたが、箱に使う板厚はほぼ入手不可能でした。そのためシナ合板で作ることにしました。

 下の写真は形ができた状態です。スピーカーをサブバッフルに取り付けて、それをフロントバッフルに取り付けますが、その寸法や構造が分かりにくかったです。

 組みあがりました。ネットワークが無いのでマルチアンプで聞いています。いずれネットワークを作るか、マルチで行くか決めていません。良い音だとは思いますが、オリジナルの音を聞いたことが無いので本来の音を出しているか残念ながらわかりません。またモノラルなので評価が難しいです。古のスタジオを想像しながら自己満足の世界に浸ろうと思います。

 塗装はまだしていません。塗装をすれば音が今より締まると考えています。 銀箱のようにハンマートン塗装をしたいですが、時間が無くしばらくこのままで聞くことになりそうです。

 

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